プレートから聞こえる「ジュッ」という音…それ、あなたの髪の悲鳴です
瞬時に髪をストレートにしたり、華やかなカールを作ったり…。ヘアアイロンは、私たちの「なりたい」を叶えてくれる、魔法のようなツールですよね。
でも、その魔法には、大きな代償が伴うことを、あなたは知っていますか?
かつての私は、その代償を全く理解していませんでした。
「高温の方が、早く、しっかりクセが伸びるはず!」と、常にMAX温度の180℃以上で設定。
湿った髪から「ジュッ」と音が鳴っても、「これが効いてる証拠」と見て見ぬフリ。
一度で伸びないと、何度も何度も同じ毛束にアイロンを押し当てる…。
その結果、私の髪はツヤを失い、毛先はチリチリに。どんなに良いトリートメントをしても追いつかない、深刻な「熱ダメージ」に悩まされることになりました。
そんな時、見かねた美容師さんが教えてくれたのが、「ヘアアイロンは、髪を美しくする“味方”にも、髪を破壊する“凶器”にもなる」という事実と、プロが実践する「髪を傷めない鉄則」でした。
この記事では、そんな私がプロから伝授された、ヘアアイロンの正しい知識と使い方を、余すところなくあなたにお伝えします。もう、美しいスタイルのために、髪の健康を犠牲にするのは終わりにしましょう。
【絶対厳守】アイロンを握る前に、あなたの髪と交わすべき3つの約束
本格的な使い方を学ぶ前に、まずは髪を深刻なダメージから守るための「絶対的なルール」を3つ、心に刻んでください。
これを守らない限り、どんなに高価なアイロンを使っても意味がありません。
約束1:髪は「100%完全に乾いた状態」で使うこと
これは最も重要なルールです。少しでも湿り気が残った髪に高温のプレートを当てると、髪内部の水分が急激に沸騰し、「水蒸気爆発」という現象が起こります。
これは、髪の内部から細胞を破壊する、最も深刻なダメージです。「ジュッ」という音は、まさに髪が内部から破壊されている悲鳴なのです。必ず、正しい方法で完全に乾かしきってからアイロンを使いましょう。
約束2:必ず「ヘアアイロン用のスタイリング剤」で髪を保護すること
高温のプレートから髪を守る「防火服」の役割を果たすのが、洗い流さないトリートメントや、ヘアアイロン用のスタイリング剤です。
髪を熱から守る「ヒートプロテクト成分」が配合されたものを選びましょう。髪をコーティングし、熱が均一に伝わるのを助けてくれます。
約束3:必ず「ブラッシング」で髪の流れを整えておくこと
髪が絡まったままアイロンを通すと、熱が均一に伝わらず、スタイリングのムラの原因になります。
また、無理な摩擦でキューティクルを傷つけてしまいます。アイロンを通す前には、必ずブラシで髪の絡まりをとり、毛流れを整えておきましょう。
運命の分かれ道!あなたの髪に最適な「温度設定」とは?
「温度は、高ければ高いほど良い」は、大きな間違いです。
髪質に合わない高温はダメージの原因に、逆に低すぎてもクセが伸びず、何度もアイロンを通すことで結局ダメージに繋がります。あなたの髪に最適な温度を見極めましょう。
【髪質別・推奨温度の目安】
▶︎ 130℃〜150℃:細い・柔らかい髪、ダメージが気になる髪
熱が伝わりやすい髪質なので、低温から試しましょう。特に、ブリーチやハイトーンカラーをしている方は140℃以下が安全です。
▶︎ 160℃〜170℃:普通の太さの髪、健康な髪
一般的な髪質の方は、この温度帯が基準になります。まずは160℃で試し、伸びにくいと感じたら少しずつ上げてみましょう。
▶︎ 180℃:太い・硬い髪、くせが非常に強い髪
熱が伝わりにくい髪質の方は、180℃までが目安です。ただし、これはあくまで健康な髪の場合。これ以上の温度は、髪のタンパク質が変性してしまうリスクが非常に高いため、プロの施術以外では避けましょう。
大切なのは、必ず「低温」から試してみること。一度でスッと伸びる、最も低い温度が、あなたの髪にとっての最適温度です。
【プロの技術】仕上がりが激変する「正しいアイロン操作」の全工程
準備が整ったら、いよいよ実践です。美容師さんがやっているような、滑らかでツヤのある仕上がりを目指しましょう。
STEP 1:めんどくさがらずに「ブロッキング」する
仕上がりのクオリティを最も左右するのが、この「ブロッキング(髪をいくつかの束に分けておくこと)」です。一見面倒ですが、結果的に時短と美しい仕上がりに繋がります。
- 髪を、上下2段に分けます。耳の上のラインでざっくりと分け、上の髪をヘアクリップなどで留めます。
- さらに、残った下の髪を、左右2つ(毛量が多い方は3〜4つ)に分けます。
こうすることで、一度にアイロンを通す毛量を均一にし、熱の伝わりムラを防ぎます。
STEP 2:「1束3cm」を「3秒」で、スッと通す
ここがアイロン操作の心臓部です。
- 分けた毛束の中から、幅3cm程度の薄いスライスを取ります。一度に多くの毛束を挟むと、内側に熱が伝わりません。
- 毛束の中間あたりを利き手ではない方で持ち、優しくテンション(張力)をかけます。
- アイロンを髪の根元から数センチ離した位置に挟み、「ゆっくり、でも止めずに、一定の速度で」毛先まで滑らせます。時間の目安は、根元から毛先まで「3〜5秒」です。
【絶対NG!】
- 同じ毛束に、何度も何度もアイロンを通さない!(一度で決めるのが理想)
- 途中でアイロンの動きを止めない!(「カクン」という跡がつきます)
- 力を込めて、ギュッとプレスしない!(摩擦でキューティクルが傷みます)
STEP 3:髪の熱が冷めるまで「触らない」
アイロンを通した直後の髪は、まだ熱を持っていて形が不安定な状態です。ここで触ってしまうと、形が崩れる原因になります。
髪は、熱が冷める瞬間に形が固定されます。アイロンを通した毛束は、そっと冷めるまで置いておきましょう。全ての毛束にアイロンを通し終えたら、最後に手ぐしやブラシで全体を整えます。
最後に:道具を正しく理解すれば、最高の味方になる
ここまで、ヘアアイロンの正しい使い方を解説してきました。
ヘアアイロンは、あなたの髪を美しくも、ボロボロにもする、まさに「諸刃の剣」です。でも、その特性を正しく理解し、髪をいたわる気持ちを持って向き合えば、これほど頼りになるパートナーはいません。
今日の夜から、ぜひ「温度設定」と「アイロンを通すスピード」を少しだけ意識してみてください。髪のツヤと柔らかさが、今までと全く違うことに、きっと気づくはずです。


